今回は、利己性と利他性について、先行研究を基に議論しました。
まず、社会的価値志向性という概念の、自分の利益を優先する利己性、他者の利益を優先する利他性にあたるということが明らかになりました。
(『社会的価値志向性研究の現在ー測定法をめぐる問題ー』森久美子、関西学院大学社会学部起用、2015)
次に、利己性が強い人の特徴として、意思決定が遅いとき協力的になり、モデルベースへの依存性が高く、効率的な学習を選択するため、学習速度が速いとされています。また、利他性が高い人の特徴としては、意思決定が速いとき協力的になり、モデルベースへの依存性は利己性の高い人より低く、モデルフリーの場合であっても適応できるが、非効率的で学習速度は遅いとされています。
(【玉川大学脳科学研究所 研究成果】利己的な人は利他的な人より熟慮する -- 2段選択状態遷移課題を用いた研究成果)
https://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_21506.html(2024.12.29最終取得)
(【脳科学研究所】利他主義者は素早く協力し、利己主義者は時間をかけて協力する-米国の科学雑誌"米国科学アカデミー紀要(オンライン版)に論文を発表-)
https://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_12320.html(2024.12.29最終取得)
このような特徴がわかったところで、利己性の強い子、利他性の強い子、どちらかが強めの子など、様々な特徴の子供たちに対して、どのように対応していけばよいのかというところを考えていく必要があります。
例えば、利己性が強い子供には、効率的な学習を選択するという特徴があるので、主に教科学習の中で、その特徴を生かすことができるのではいかと考えられます。また、利他性が強い子供はモデルフリーな学習を得意とするので、特別活動や行事等の活動に主体的に取り組ませることで強さを発揮できるのではないかと予想されます。
とにかく勉強に強い子、運動会や学習発表会、係活動で力を発揮する子、学校における学習課程の中で、強みを発揮できる場面が違う。これは今まで通りなのですが、子供を見取る視点の1つとして、利己性や利他性の観点から捉えた見方ができるのではないかと考えます。
ただし、しばしば学校で大切にされる「協調性」について考えると、利他性の強い子はすぐに協力的になるのに対し、利己性の強い子は熟慮してから協力的になることが、参考にした研究から明らかになります。協調性が必要になる場面で、すぐには一体感が得られないことは、必然で、利己性の強い子が協力的になるまでの時間を教師が嫌がらず、子供に向き合って、協力的になるのを待つしかないのだと考えます。もちろん、話を聞いて説得しなければならない場面もありますが。
今回の研究会では、先行研究を理解し、子供の姿でイメージすることを重視したため、あまりこれといって明らかになったことはありませんでした。まだまだ議論の余地があるということです。それはまた、2025年に子供の姿をイメージし、教室内でどのように生かすのかを考えていきます。