第93回研究会(2024.10.25)

 学校は、子供の自己効力感(〜できる)や自己有用感(〜のために、〜の役に立つ)を育てるだけに終始していないだろうか。

 そのため、子供には「できた」自分や、「誰かのためになった」自分に出会わせている(認める、褒める)ことがほとんどである。

 「将来の自分のために」「社会人になるために」を最終的なパワーワードとして、子供を追い込み、押し付けすぎていないだろうか。

 社会に出るときには、「〜ができていなければならない」「人の役に立たなければならない」というイラショナルビリーフをたくさん詰め込んだ鞄を持って出社するべきなのだろうか。

 「社会人として、仕事ができていなければならない」「年収1000万ぐらいないと、できない奴だと思われる」「結婚して、新築戸建てに住み、子供がいないと不幸な奴だと思われる」こんなありもしない幻想を抱きながら人生を生きていかなければならないのだろうか。

 「〜ができていなければならない」「周りに合わせなさい(周りを見て行動しなさい)」「人の役に立ちなさい」と人に刷り込んだのは誰でしょう。


 宮﨑(2022)によれば、自己効力感とは「何かができるという気持ち」であり、自己有用感とは「誰かの役に立っている」ものである。また、本会が今後着目していく自己肯定感とは、「(自己肯定感が高いとは、)ありのままの自分を”無条件に”受け入れ愛している状態」のことである。そして、自己肯定感が高い状態で自己効力感や自己有用感を上げると、見返りを求めずに行動でき、自分のやりたいことがわかり、それに取り組むことができる。


 ここで、本会の芽線研究の大きな落とし穴が確認できた。それは、自己肯定感の低い子供に「なりたい自分」を思い描かせることには、無理があったということである。

 ありのままの自分を受け入れられない子に、将来どうありたいかを問うても、思い描けるはずがなかったのである。芽線研究の難しさの一因がここにあったのかもしれない。もし、描いていたのだとしたら、それはすでに「描かなければならない」を押し付けていたのかもしれない。恐らく「なりたい」と言いながら、「どうせなれないけどね」「今だけ書いておけばいいんでしょ」という刹那的な子供を育ててしまっていた可能性がある。

 では、子供の自己肯定感を高めるために、我々小学校教師にできることは何なのか。今後1ヶ月間の各教室での実践を通しながら、考察し、次回研究会で議論していく。(今回の研究会では、「利己」「利他」の視点も課題となったため、次回この点についても各自の実践を基に議論する。)


【引用・参考文献】「鋼の自己肯定感」宮﨑直子著、かんき出版、2022年

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm