フィンランド視察(2019.09.23)

実ある教育を語る会の村田です。

 今回、海外教育視察として、フィンランドの小中学校に行く機会をいただきました。その内容について、報告します。


 中学校2〜3年生にあたる英語クラブの子供たち4名が分担して学校を案内してくれたのですが、その英語の流暢さにまず驚きました。日本の子供たちが到底及ばない会話力でした。フィンランドの子供は、母国語以外に英語やスコットランド語等を選択して学びます。そしてその他に、テレビでも英語の番組が多く流れるため、英語と接する機会が豊富にあるようです。つまり、普段から英語を聞いたり話したりする機会が日本と比べて断然に多くあり、英語で会話をする必要感があるということです。この子供たちだけでなく、会う街の人々は全て英語でのスムーズな会話ができ、大変驚きました。

 主に中学生の授業を参観しました。日本と同じように生徒が授業が行われる部屋に移動して学ぶというものでした。各教科担当先生は自分の授業を行う部屋をもっており、それぞれの教室が授業をしやすいようにアレンジされていました。日本と同じように、小学校4年生までは学級担任が全教科を教え、5、6年生で徐々に教科担任に移行し、7、8、9年生で完全に教科担任に分かれるということでした。

 給食は、ランチルームで食べます。そんなに広くない場所ですが、学年段階ごとに時間をずらして食べるようです。低学年までは担任と一緒に食べるのですが、それ以降は各自が好きなように食べるようです。因みにバイキングになっており、自分に必要な分を考えて自分で選んで食べるといったものでした。アレルギーの子供に対応したメニューも用意されており、自分でそれを選んで食べていました。因みに給食費は無料だそうです。この他に、学校教育にかかる費用は全て、基本は無料のようです。給食当番や掃除の時間はありません。


 フィンランドの小中学校は、テストはないそうです。その代わりに「学校は、子供の自立に向けて何ができるのか」「子供は、自分やみんなの幸せのために何ができるようになるか」といった観点で、全ての教育活動が行われていました。この観点は、子供と学校と保護者、さらに社会全体のベースとして共通理解がされています。つまりフィンランドでは、小中学校は「自立のための自己選択と自己決定をするために、様々な事柄に対する価値や自分の考えを組み立てていく場だ」と、社会全体で捉えられています。決して、テストの点数や学校の見栄やどの大学へ入るかといったことが、学校で学ぶ目的や動機になっていないわけです。

 子供は「自己選択と自己決定」が保証されており、保護者や学校はそれを支える存在といった形でした。

 参観した授業の中で、教室の椅子としてバランスボールの上に座っている子供やスマホで音楽を聴きながら授業を受けている子供がいました。その子供にとってその方が「集中できる」のであれば、授業担当の先生と相談してそのようにすることは可能なようです。また、授業で分からないところがあるとその日に残って学ぶように教師が促しますが、残ってやるかどうかは子供が自己決定をするそうです。

 フィンランドでは学校行事がほとんど無いようですが、この視察の日にたまたま始業式と1年生の入学式のようなものがありました。1〜9年生が少し小さい体育館に集まり、そこで1年生からの歌の披露と新任の先生の紹介がありました。非常に短い時間でした。そこには特別支援級の子供たちも参加していましたが、かなり重度の子供も同じ学校のなかで一緒に過ごしていることが分かりました。日本よりもインクルーシブが進んでいるようでした。

 次に、フィンランドのキャリア教育について以下に記します。先に書いたように、フィンランドでは小中学校ではテストがありません。卒業後は、日本の高校の普通科にあたる学校と職業訓練校のどちらかを選んで進学するようです。どちらに行くかは自分で決めるそうです。また、進級後に学校を変更することも可能とのことです。因みに、それらの学校は単位制でのようなものになっており、自分で選んで授業を受けるようです。そして、職業に就くためにはその職業に応じた資格が必要となり、どの職業にどの資格が必要となるかといったことは、国が細かく設定しているようです。その資格の取得は、主に「実技が伴っているかどうか」だそうです。

 このように進学先を自己決定するためには、小中学校段階から子供たち一人一人が自身の「なりたい自分」について考えることが欠かせません。フィンランドでは、「自己決定と自己選択」を教育の目的の中心に据えているため、個人がしっかりとした自分のビションをもっているようでした。因みに私が一緒に食事をした8年生の男の子に聞いてみたところ、「警察官になりたいと思っている」と明確に答えてくれました。

 ちょうど昼休みの時刻に学校を後にしたのですが、中庭のような所で、小さい子供達が楽しそうに遊んでいました。途中で結構強く雨が降ってきたのですが、カッパのフードを脱いで雨に濡れて遊んでいる子もいました。そして、その様子を見守る先生方がいました。一方で、高学年の男子の子たちは、玄関の外に出た所で携帯ゲームで遊んでいました。どうやら、校内では携帯ゲームを使ってはいけないけれど、校舎外では許されているために遊んでいたようです。どのように遊ぶかといったことも、かなり大きな幅をもって「自己選択と自己決定」をさせていることが分かりました。

 この視察で、本や動画では分からないフィンランドの教育のリアルな姿についてその一端を知ることができました。また、そこに住む人々の姿から、教育の背景となる様々なものを感じる事ができました。

   教育制度だけでなく、「どのような価値を大切にして生きるか」といったことについて、もっと日本が、日本の大人たちが学ぶべきことがあるように思いました。この視察で得た学びを今後の研究に生かしていきたいと思います。

   以上、フィンランド視察について、村田からの報告を終わります。

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm