京都まなびの街生き方探究館を訪問(2019.08.20AM)
実ある教育を語る会、夏の県外訪問の2回目です。
今回は、村田・宮腰の2人が京都市の先進的な取組について学ぶべく、キャリア教育の中心的役割を果たしている施設である「京都市まなびの街生き方探究館」と、先進的に取り組んでおられる「京都市立岩倉北小学校」を訪問させていただきました。
まずは前半、京都市まなびの街生き方探究館にて葉山指導主事と長谷川指導主事が教えてくださったことについて報告します。
<京都市まなびの街生き方探究館>
京都市では、教育が市民の中に根差しており、地域の中で子どもを育てていくという風土が醸成されている。そのような中で、平成19年に「生き方探究(キャリア)教育」に特化した先進的な体験型学習施設として「京都市学びの街生き方探究館」を設立した。市内の小中学生が来館し、職業体験、生活設計体験、モノづくり体験など生き方探究に必要な体験活動ができる施設である。統合された滋野中学校の校舎を活用し、企業やボランティアの協力を得て、子どもたちが充実した体験活動を行うことができるようにしている。建物の地下から3階まで多くの企業のブースがあり、各企業ができるだけ本物に近づけてブース内を整えている。
この施設では、小中学校の学年段階に合わせて、主に3つの体験活動を行うことができる。
1.京都モノづくりの殿堂、モノづくり工房 (主に小学校4年生が体験)
*モノづくり会社17社、16のブース
京都のモノづくりに携わる人々について調べ、働く人の思いを学ぶことができる。また、様々なモノづくりの体験を行うことができる。発展として、動くおもちゃを作って参加する「トイ・コンテスト」も行われている。
2.ステューデントシティ (主に小学校5年生が体験)
*銀行・商店・新聞社・区役所等の12ブースからなる街
この街の中で、社員や職員と消費者の両方を体験することで、社会と自分との関わり、お金とは何か、働くということはどういうことかということについて学ぶことができる。事前に各学校で10時間学習し、まる1日6時間かけて体験する。「働く人」と「消費者」の両方を繰り返し体験する中で、社会の仕組みや働く意味を感じることができる。事後学習として2時間学ぶ。各ブースには制服が用意され、その制服を着てできるだけ本物に近い状態で体験をすることができる。区役所で住民登録を行い、働いたお金で消費者として商品を購入したり住民税を支払ったりする。また働く側としては、会社の経費を銀行に預けたりローンを支払ったりして利益が出るようにする。会社の中では様々な部署の役割を担い、社内会議を繰り返す中で協働することを学ぶ。
この体験には、必ず複数の学校が一緒に活動するようにしている。なお、ブースの設置や備品や商品の用意は全て各企業が行っており、体験当日の説明や補助も企業の社員やボランティア、保護者が行っている。
3.ファイナンスパーク (主に中学校1年生が体験)
*19業種17ブースからなる街
それぞれが割り当てられた個人カードの家族構成や年収に応じて、街でどのようにお金を使っていけばよいかということについて、体験を通して学ぶ。税金・保険、食事や光熱費、住宅費などの生活に必要な費用の試算や商品やサービスの購入・契約を体験する。事前学習を5時間行い、体験学習はまる1日6時間行い、事後学習を1時間行う。生活設計能力を体験を通して育成する。
京都市では、キャリア教育について「生き方探究教育」という名のもとで取り組んでいるということであった。そして、「生き方探究教育スタンダード」なるものを市で策定し、各学校が工夫して取り組んでいるということであった。上記の施設もその取組の中の一つで、ほぼ全ての市内の小中学校が利用している。
視察を終え、京都市のキャリア教育に対する意識の高さに、ただただ驚きました。そして、キャリア教育の推進が声高に叫ばれるずっと前から、京都市が「生き方探究教育」として「子どもたちの自立を支援する」ことに力を注いできたということが分かりました。キャリア教育の核となるこの施設では、働くということを様々な角度で繰り返し体験を通して学ぶことができるようになっています。体験後の家庭での会話の中には、家族の仕事についてや働くことについての話題が上がることが多いそうです。また、中には学習へ取り組む姿勢が顕著に変わる子どももいるそうです。それだけ、「働く」ということや「生きる」ということに対して、自分なりの考えをもつきっかけとなる貴重な体験活動になっているのではないかと感じました。そして、このような体験活動を系統的に行うことができることに、京都市で学ぶ子どもたちはとても幸せだとも思いました。一方で、現場では「この施設で体験活動をすればキャリア教育が果たされる」といった誤解も生まれ始めているということもお聞きしました。このような施設での体験活動を、子どもたち自身が自らの生き方に生かすための、体験前後の学びがより一層重要だと感じました。
この施設を運営するに当たり、多くの企業が自前でブースを用意し、多くのボランティアの方々が関わっているそうです。子どもたちを、学校の中だけではなく社会や地域の中で育てていこうという強い意志を感じることができました。
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後半へ続く
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