第20回研究会(2019.06.12)
本研究会も、20回目を迎えました。
今回は、今年度初めて辻󠄀井研究室で研究会を行いました。
さらに新メンバーも加わり、活気あふれる研究会となりました。
改めての自己紹介の後、本研究会の目的について、代表の氷見先生より話がありました。
その後、村田先生より、前回確認したキャリアパスポートの概要についての話があり、
先進的に取り組んでいる地域について報告がありました。
文部科学省のホームページには、様々な地域の先進的な事例が掲載されています。そこには、20の都道府県や地域で、既にキャリアパスポート等を活用した先進的な取り組みが行われていると紹介されています。
今回はその中でも、「平成30年度キャリア教育・進路指導担当者等研究協議会」での先進事例として紹介された、秋田県大館市の取り組みについて、動画を視聴し、学びを深めました。
秋田県大館市では、既に8年前から「キャリアノート」を活用し、地域を挙げてキャリア教育に取り組んでいます。その成果として、学ぶ意欲や働くことに対する意識の向上、学力の向上、地域に貢献する意識の向上等があったそうです。
動画を見た後、メンバーから様々な感想・意見が出されました。
・キャリアパスポートを2つの視点で振り返って書くことで、将来これを開いてみた時に、この2つの視点で自分の成長をふり返ることができて良いと思う。
・大館市では、学習課題を追究型にしていることが参考になった。一方で、全部の授業を追究型にするのは難しいのではないか?
・学びを、どうキャリアと結びつけられるのかが難しい。「勉強したことが、将来どのようなことに役立つのか?」と考えることなのだろうか。
・「キャリアパスポートの意義」である①校種を超えた縦のつながり②教科を超えた横のつながり③高校での中退・不登校の未然防止といった点が参考になった。高校の教員には、積み重ねたことによるメリットが感じられやすいと思うが、一方で、小学校中学校の教員へのメリットはあまりないのではないか。
・書くことによって、自分がどう活動できたかについて、事後に振り返ることができる。
・キャリアパスポートは学期に1~2回の記録を蓄積するということだが、普段の授業全てでずっとキャリアを意識して指導していくのは難しそうだと感じた。
・学校現場は、今の状態でも忙しい。そんな中でキャリアパスポートが現場に導入されると、負担感が増加しそうだ。
・学級の子どもたちを見ていても、自分で意思決定する大切さや、意思表示する大切さをよく感じる。
・様々な授業の終末で「振り返り」を書くことの重要性を感じた。
・キャリアパスポート自体、本当にこれでいいのか?「こんな人になりたい、こんな仕事をしてみたい」という思いが、キャリアパスポートに表れるのか?高校のためにやるのでは?といった印象だった。
・本当にこれを採用していくことが、子どものためになるのか? 本当にキャリアパスポートを活用できるのか?キャリアパスポートをうまく書くことが目的にならないようにしたい。
・小学校の教員は、キャリアパスポートの変遷が最後まで見れない。そんな中で、小学校の現場では意義を感じて取り組めるのか、疑問である。
・ただ書いていくだけにならないか心配である。高校における不登校や中退を防ぐためにやるのか?内申書の代わりになるというものになってしまうと、本来の目的とずれてしまうのではないか。
・子どもたちが描いたキャリアパスポートが、現場でどう評価されていくのかが課題であると思う。改めて、キャリアパスポートは、どこを、何を目的にしてやっているのかを確認したい。
・自分が小学生の頃はどうであったかといった視点でこの取組を考えていけたらよい。今の子どもたちは、様々な枠組みを用意されていて、「子供らしさ」を出しにくくなっているのではないか。成人が18歳となり、また少子高齢化の背景もあり、子どもたちに早く大人になることを政府が求めているように感じる。子どもに、早急に将来を求めることが公教育の本当の責務なのだろうか。
・学校では、「あなたのいい所は、ここなんだ!」と伝えることが重要なのではないだろうか。子どもは本来、刹那的な生き物である。刹那で楽しみ、刹那で悲しむ子どもにとって、キャリアパスポートは、時には自分と対話するツールという扱いがまず基本なのではないか。これを少しずつ積み重ねるのでよいのではないか。
・一方で、本研究会が定義した芽線による刺激は、やはり子どもにたくさん与えていかなくてはいけないと思う。
・キャリアパスポートは、使い方を吟味しないと、うまくいかないのではないか。その意味でも、学校や地域の実情に合わせて、ある程度、キャリアパスポートの自由度を高めることが必要なのではないか。
その後、辻󠄀井先生から以下のお話がありました。
・学校現場では、既にキャリアにつながる取り組みを多く行っているのではないか?実際に行っていることを、キャリアという観点で整理して並べ直すという視点で良いのではないか。そして、キャリアパスポートには、自分が成長していった姿を書き込んでいくだけで良い。キャリアパスポートはあくまでもツールである。なので、それを書く前に、どのような活動をするかといったことが大事である。
・毎日の授業の中で 「振り返り」がキャリアになってくる。「振り返り」の時間を10分間取るといったことを半年間続けると、確実に学力が上がる。このことは、研究調査結果からも明らかである。ポイントは、授業のまとめを書くのではなく、「学んだこと」を書くことである。
キャリアパスポートに数年前から取り組む秋田の事例を視聴し、活用の具体と懸念される事柄について、確認することができました。 それと同時に、本研究会で昨年度取り組んできた実践の意味と効果について再認識することもできました。
今後は、実際にキャリアパスポートの活用を視野に入れ、各学年段階のキャリア教育の展開のありように焦点を当て、深めていきたいと思います。
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