第9回研究会(2018.05.25)

今回は、富山国際大学の辻󠄀井教授の研究室をお借りして研究会を行い、辻󠄀井教授にもご助言をいただきました。
村田先生と石垣先生から、今年度の自級の様子や、そこから考える学級全体への芽線と子供一人一人への芽線について提案がありました。学級の様子や個々の芽線については、個人情報が多分に含まれるため割愛します。

提案者 村田

今年度は様々な場面での振り返りの機会を大切にしていきたい。様々な取組に対して「内省」していけるために、「成長したこと、学んだこと、大切だと思うこと、大切にしていきたいこと」といった視点をもって振り返るようにしたい。また、子供の様々な可能性を広げるために、多様な価値や可能性に気付いていける、気付き合うシステムや学級風土づくりをしていきたい。子供の伸びようとする力を信じ、待つ、任せるといったことを大切にしたい。

以下は話し合われた内容です。

「夢をもつ」ということは、「将来に希望をもつ」ことを同じである。地域や周りの大人が、将来の職業についてのモデルとなっているのは、周りの大人が子供に語っているからではないか。家庭や地域が安定しているから、子供が将来の自分の姿を周りの大人の姿に投影できる。逆に全くそうでない場合は、子供自身が「なりたい自分」を描いていくことがなかなか難しい。

子供にとって、「周りの大人が、自分の話をしっかり聞いてくれた。」ということが心の支えになってくる。例えば、低学年や中学年での友達同士のトラブル等を、子供の思いを無視して教師が納得させないまま頭ごなしに押さえ込んで収めていくと、子供の心は育っていかない。むしろ、高学年で荒れとなって出てくる。子供との対話を通して、対応策を一緒に考えていく中で、本当に子供の心が育っていく。しかし、今学校は、学力向上・授業時数確保・行事の精選等で、一人一人の子供とじっくりと向き合う余裕がなくなってきている。子供が、憧れをもてる大人のモデルとして身近な教師を投影できるか、それだけ一人一人の教師が子供と向き合えているか、教師がその自覚があるのかどうかが問われている。

この段階での子供にとっての夢は、まだ「あこがれ」である場合が多い。「あこがれ」から、「現実味を帯びた未来」として自分の将来を捉えてキャリアビジョンを描いていけるようにするためには、ある程度の現実の世の中の厳しさといったものを、伝えていくことも重要ではないか。ただし、子供の実態を踏まえて、タイミングや言葉を選んで厳しさを伝えることをしなければ、「どうせ自分は…」といった将来に対してのあきらめの気持ちになってしまう。

提案者 石垣

「子供が静かにしない」という場合、そもそも話を聞くということの大切さや価値を子供が分かっていない可能性がある。その際は、話を聞くことの価値や大切さを、教師が語って教えるということが必要である。教師の言葉に「従順」であることがはたして良いのだろうか。教師の言葉に「従順」である子供は、ある意味「何も考えない」子供なのではないか。自ら「分からない」と発信できる子供、「なぜそうしなきゃいけないの?」と問える子供であることが重要だと考える。そうでないと、自分の将来を自分の意志で決めていくといった主体性は生まれてこない。

これらのことから、今年度は「聴いて考える」ということを大切にしていきたい。「聴く」ということも「考える」ということも、キャリア的に考えていくときの一つの視点に過ぎないと思うが、今の発達段階では、この力をしっかりと付けることが重要だと考える。

以下は、話し合われた内容です。

例えば、4月の家庭訪問前の早い段階で、子供一人一人と個別に面談し、子供の思いをつかんでおくことができたら良い。それぞれの子供が抱える問題や不安、伸びようとしている方向等を、早い段階で教師がつかんでおくことで、子供の思いに寄り添った指導ができる。しかし、学校の4・5月の現状は、様々な行事が立て続けにあり、教師も子供の思いを聞く心の余裕がない。行事を精選するなどして、子供一人一人の思いを教師がしっかりと捉える機会を設けていくことが大切ではないか。子供の思いを捉える際には、子供と正対して話を聞くというよりも、休み時間に一緒に外を見ながら話をするといった方法をとっていく方が、子供の本音を導きやすいのではないか。

授業において、1人の子供にスポットを当てて授業を組み立てるといったことがあっても良いのではないか。その子供に向けられた教師の視線や思い、手立ては、その子供に伝わる。そういったことを多くの授業時間に続けていくと、子供が変わってくる。


今回の研究会では、「つながる」といった本会が大切にする価値が表れてきたように思います。子供と教師が「つながる」ということなしに、子供が本音を語れるはずがなく、さらに自分の将来を真剣に見つめてキャリアビジョンを描くということなど不可能であるといえます。さらに、子供が信頼を寄せる家族や周りの大人と「つながる」ことが、その姿をモデルとして自分の生き方に投影していくきっかけになるのではないかということも見えてきました。

次回は6月に、宮腰先生から学級の捉えと一人一人の芽線について、氷見先生からその後の学級の変容についての提案がある予定です。


実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm