第75回研究会 (2023.3.10)
今回は、次年度の研究の方向を具体化するべく、国際大学をお借りして話合いました。前回の話合いでは、次年度は本研究会で開発した「芽線」を意識して子供たちと関わり、その効果について検証していこうとなりました。
まずは具体的な研究の骨子と流れについて村田が提案した後、議論を交わしました。主に、「教師が芽線を意識して子供と関わった際、その効果をどのように検証するか」ということが中心として話し合われました。以下がその内容です。
①質問紙の内容について ~自己肯定感、自尊感情、自己有用感等についての質問紙の検討~
効果検証が可能となりそうな質問紙として、「福岡県教育センター」、「栃木県総合教育センター」「東京都教職員研修センター」の自尊感情尺度や自己有用感アンケートが持ち寄られました。その中で、自己有用感、自己肯定感、自尊感情の違いがテーマとして挙がりました。次回の研究会で、芽線の捉えによって向上していくと予想される質問内容について検討を重ね、質問紙を決定していくことになりました。
②実践家である自分たちの強み
実践家としての自分たちの強みは、日々子供たちと接し、共に過ごしているということです。自分たち教師の振舞いによって、質問紙の量的な数値としてはなかなか現れない効果や変化を肌で感じることができます。そのような教育効果を、自分たちの日々の記録をもとに質的に見つめることができるということが、実践家である自分たちの強みではないかとの意見が出されました。次年度は、質問紙による変化のみならず、変化が表れた根拠について我々の日々の記録を大切にして紐解いていきたいと思います。
➂芽線の在り方
平成30年、本会では「芽線」という子供の見方、捉え方を明らかにしました。その時に定義した芽線は、子供を「今ある職業」とつなげて将来の可能性を探るということでした。またそれは、キャリア教育が目指す「職業観、勤労観」の育成にも沿うものでした。しかし、将来は今ある職業の半数がAIやロボットに置き換わるとも言われています。そのような中において、今ある職業とつなぐことが果たしてよいのだろうかという問いが出されました。このことについて、本会設立当初から参加している会員からは、自級の子供には職業というよりもその子が大人になった姿を思い描いてその可能性を伝えているとの意見も出されました。このように、芽線の定義については、再度確認が必要であるとのことになりました。
④変容をどのように捉えるか
芽線を意識していくことで、様々な変容が予想されます。例えば、教師自身の意識変容、子供の変容、学級集団の変容です。このような変容のいずれに着目して変容を捉えていくのかを絞る必要があります。もしかすると、着目する点を焦点化することで、複数の研究内容になるかもしれません。今回は、教師の意識変容によって子供への関わりや声掛けが変わり、そのことによる子供の変容を捉えることに焦点化することになりました。
最後に、辻井先生からの助言をいただきました。
・質問紙は、結果を受けてどのような教師の関わりがよかったかを分析することが大切である。よって、着目した児童への関わりと反応の記録をしっかりと残しておきたい。また、質問紙にプラスαの参考資料としてであれば、Q-Uを活用してもよいのではないか。
・「芽線」の定義は、以前本会で定義したものでよいのではないか。今ある職業であっても、「子供の将来の可能性を広げる」という意味で捉えたらよい。
・抽出児の変化は、学級集団の在り方によって大きな影響が及ぼされる。よって、当然であるが、よりよい学級集団を作っていくことも重要である。このような学級集団の中での子供の変化を、どのように記録していくかは工夫が必要である。その工夫を検討したらよい。
今回の研究会では、研究の具体的な方法が明らかとなってきました。
次年度は、改めて「芽線」に立ち返って実践を重ねていきます。大切なのは、教師が未来志向の意識をもって個々の子供と接すること、そして自身の行動と効果を振り返り、次なる実践へとつないでいくことです。日々の実践に本気で取り組み、目の前の子供たちの成長や変化をワクワクして見つめていけることを大切にしたいと思います。
村田 夏樹
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