第68回研究会(2022.10.13)
今回は、「若手の本音を話そう・聞こう!」というテーマで話し合いました。
今から5000年前のエジプトのピラミッド建設に携わった人々は、ピラミッドの天井や裏などの人目のつかない所に、「近頃の若者は~」といったことを書き込んでいたようです。どうやら、ジェネレーションギャップは、現代社会の問題ではなく人類がずっと昔から抱えている問題だとも言えそうです。今回は、若手の教員が普段感じている先輩や学校組織に対する本音を聞き合うことで、それぞれの立場から見える、学校教育や組織について考えを深めました。
最初に、「20年前と今では、若手に求められることが変わってきているのではないか」ということが問題提起されました。昔は、「失敗してもやらせてもらえる」という感覚があったが、今は「学校の効率化から様々な枠組みが定められており、ある意味若手はやりやすいかもしれないが、その分の自由度がないのではないか」ということです。このような中で、若手の教員は自分の色を出したり、挑戦して失敗して学ぶことが少なくなったりしてきているのではないかということです。
若手の教員からは、以下の意見が出されました。
・授業中に、自分が大切にしたいことと異なる内容を、先輩から指摘されて困った。
・自分がしたい仕事ができないと、やる気が出ないと言っている教員がいた。
・「頼まれ事は、試され事」と思ってやってきたが、3年目にして県の仕事や研究授業が多く当たって辛かった。
・師匠と呼べるような先輩になかなか出会うことができなかった。
・先輩の指示が、「愛なのか、仕打ちなのか」分からないときがあった。
・主任から、急に「明日から○○するよ」と言われて困った。予定があるのに。
・研究授業の指導案を、全て書き直すように言われて辛かった。自分の考えを押し付けるようなことが嫌だった。
・自分の思いばかりを押し付ける先輩は、自分を育てようとしてくれているのか分からない。
このような意見の中で見えてきたことは、「やろうとした意図を汲むこと、傾聴すること、労をねぎらうこと」の大切さです。若手の教員は経験が少なく、失敗するかもしれません。しかし、自分で考えて実践しようとしたことに対しては、まずは「思いを受け止める」ことが重要であるということです。そしてこのことは、職員室の人間関係においてだけではなく、学級の子供に対しても同じなのではないでしょうか。
話題は、「指導案の修正」へと向かっていきました。
研究授業をする際、授業者は指導案を書いて研究主任や教務主任、管理職の先輩教員にチェックを受けます。その際、真っ黒になるほど書き込みを受けることがあります。その時に、どのようにしてきたかが話題として挙がりました。
・指摘を受けて、素直に直す。直しつつ、今後自分の色を出せる部分が増えていくとよいと思っている。
・教員が熱をもって授業をやらないと、子供はついてこないし楽しくない。しかし、修正していく中で、自分のやりたいことが実現出来なくなることもある。そんな時は、自分も楽しくない。
・様々な立場の先輩ごとに、指摘が異なることがあって困るときがある。
・指導要領を根拠に修正してく中で、やりたいことができなくなっていくことがある。
・修正をもらった時には、その意図を自分が納得できるまで聞くようにしている。
これを受けて、先輩教員からは、以下のような話がありました。
・授業は、基本は授業者と子供のものである。なので、授業者が納得してやらないと、授業にならないのではないか。そのために、先輩からの指摘は「自分より経験のある先輩の、他者の視点を得た」と思ったらよいのではないか。
・「人は、自分の気に入った人の意見しか取り入れないのではないか」つまり、どのような指摘をされたか以上に、どのような関係の誰に指摘されたかが重要であるということである。自分のことを育てようとしているという人間関係作りを、一人一人の若手教員に対して先輩教員はしていくべきであり、そうでないと伝わらない。そしてこのことは、職員室でも教室の子供に対しても同じである。
・自分たちが若手の時は、2か月に1度は指導案を書いて先輩から指導を受けていた。その際に、指導案の書き方や考え方、授業の作り方を徹底的に教わった。まずは指導要領の考えを理解し、まねることからでも授業の基本を身に付けることが重要である。その上で「自分のやりたい授業」が少しずつ実現できてくるのではないか。
・「組織」を意識することが重要である。「自分のやりたいことを通す」ことが、わがままを通すことになってはいけない。学校は、教員一人で動いているのではない。自分の考えを同僚や先輩に分かってもらうためには、多くの対話を重ねていくことが大切である。
最後に辻井先生からは、今回の研究会のように対話を通して自分の考えをまとめていくことは大切であること、様々なことに挑戦してやってみることで経験が増え、成長へとつながっていくとの助言がありました。
今回の研究会では、「若手の本音を話す・聞く」というテーマで話し合いました。その中で、若手を育てていく先輩教員も、悩みながら日々取り組んでいることも見えてきました。今回の話合いでは、各自の本音を聴き合えて深めることができました。
この中で見えてきたことが、「関係性」ということです。当たり前のことですが、全ての人は、異なる経験を重ねて生きています。そして異なった経験をベースとして、一人一人の考えや価値観が別々に形成されています。生きた場所や年代が異なれば、経験が大きく異なるのは当然のことです。このような「異なること」を大前提として、先輩や後輩の教員、子供たちに日々接することができたならば、そこに「尊敬」や「感謝」の気持ちが生まれてくるのではないかと考えます。「先輩だから」「後輩だから」「子供だから」というレッテルに囚われることなく、「その人が生きてきた経験に思いを巡らして」丁寧な対話ができたら、そこから各自が学ぶことがあるに違いないと思います。
このように様々な経験を経た教員が集って、本研究会で「本音」で対話ができることは有難く幸せなことだと、改めて感じました。
会長 村田 夏樹
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