第6回研究会(2018.02.27)
今回は、本会のアドバイザーを引き受けてくださった辻󠄀井満雄教授を交え、富山国際大学辻󠄀井研究室にお邪魔して、第6回目の研究会を行いました。
各自が日頃の教員生活の中で疑問に感じることや、今の小学校教育への思いなどを、教職41年のキャリアでいらっしゃる辻󠄀井教授に質問形式でお伺いしました。内容は多岐に渡り、その一つ一つを辻󠄀井教授は受け止め、ご指導くださいました。その一部をご紹介します。
質問 石垣
現在、2年生を担任していて、設定した芽線による声かけを継続している。しかし、子ども達の反応がいまいちであり、担任側の芽線によるほめ言葉が嫌なのかなと感じる。
2年生など、低学年の子どものキャリア意識を高めるためには、どうしたらよいのか。
辻󠄀井教授
将来的な夢へつなぐ声かけは難しい。夢に結びつくような声かけがいろいろ、いくつもあってよいのではないか。例えば、恐竜が好きな子どもに、「考古学者になればいいよ」では通じない。骨を並べるのが好きなのか、恐竜の説明をするのが好きなのか、発掘するのが好きなのか、いろいろある。
説明するのが好きなら、他の仕事にも結びつけて声をかけることもできる。
今すぐつながらなくていい。「どんなことが楽しい?」と楽しさを植え付けていく。授業や活動をやらされていると思わせないよう、教師が楽しく演じていくことが大事。
可能性は一つじゃないし、10年後に開花するかもしれないし。
質問 村田
子ども達の今ある姿に輝きを見い出そうと、日々努めている。夢は変わるものだし、どれがいいとか、悪いとかではないと思う。そんな子ども達の夢を広げる、可能性に気づかせる声かけのあり方についてお聞きしたい。
辻󠄀井教授
教師は、人を動かすプロデューサー。子ども達に伝播するほめ方をしなくてはいけない。一場面を捉え、いろいろなほめ方ができなくてはいけない。
そのためには、教師がいろいろな職業や社会で起こっていることに関し、たくさんの価値を知っている必要性がある。だから、教師が学校と家の往復をしているだけではだめ。人と会う、本を読む、いろいろな価値観を吸収しなくてはいけない。
教えるだけなら、今後はロボットがしてくれれる。小学校教師に求められる力は、「つなぐ」力だと思う。人と人、人と物をつないでいかねばならない。
質問 石垣
最近、アクティブラーニングが重視されているが、それらは外国で10年前に流行ったもののように感じる。なぜ、日本の教育は遅れている印象があるのか。
また、授業を静かに受けているクラスはよいクラスだとか、Q-Uが高いとよいクラスだとか、本当にその価値を信じているのでよいのだろうか。無駄なものもあるのではないか。そんな中、子ども達にどのように将来像を描かせていけばよいのか。
辻󠄀井教授
確かに、日本はアメリカの教育を10年遅れで取り入れている、と言われる。しかし、日本ほど、教師に対する研修を国、県、市と系統的にこれだけ行っている国はない。
子どもが主体的に学んでいる状況は、静かにはならない。互いに関わり、自分の思いをぶつけ合うということは、にぎやか。そこから真に個の追究が始まれば、自然と静かになる。大事なのは、考えているからクラスが静かなのかどうかということ。
自分が今まで担任したクラスも、一つ一つルールが違っていた。例えば、知りたいから辞書を取りに立ち上がった子どもが叱られたら、一気に意欲を失い、もう知りたいとは思わない。その子どもが立ち上がった時、ルールを作り出していけばいい。
いずれにせよ、子ども達が「もう終わり?」と没頭を中断され、残念がる授業がいいね。
質問 横田
道徳の教科化、プログラミングなど、学校教育に新しいものが増え過ぎているような気がしている。それら新たな取り組みが研修によって全ての教師ができるようになっていくとは、とても思えない。まだ何か増えるのではないかと、不安になる。減るのは、学校行事ばかり。正直、対応がとても大変で、それなら人員を増やしてくれた方が意味があるのではないかと思う。先生はいかにお考えか、お聞きしたい。
辻󠄀井教授
求められることを全部やったらバンザイしなくてはいけない。増えたものを365日対応しなくてはいけないわけではない。年間のどこかでやればよい、というものもある。調べてみると、校務分掌が200ある学校があり、どうなんだろうと。
学校行事が減るのはつまらない。昔は熱を入れ、子ども達を動かしていた。そんな場面で楽しみ、はみ出す経験が教師には必要。それを経験してないと、後輩にここから出るなと言えない。自分がそれしか勉強してないから。もっとはみ出していい、もっとやっていいんだよ、と若手を育てる方がすばらしい。
はみ出した授業すると、子ども達は正直だから、おもしろがる。それについて子ども達から批判はないと思う。
ここに紹介したものだけでなく、辻󠄀井教授からは、まだまだたくさんのご指導をいただきました。本当に刺激的で、実りある時間となりました。辻󠄀井教授、ありがとうございました。そして、今後とも、ご指導よろしくお願いいたします。
力強いアドバイザーを得た我々、実ある教育を語る会は、今後さらに実践・討議を重ね、子ども達の確かな成長のために、力を尽くしていきたいと思います。
次回は、3月中に芽線の一覧を基にした声かけを続けてきた上での、3学期における子ども達が見せた変容についてまとめる予定です。
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