第54回 研究会(2021.12.15)
2021年、今年の研究会もラストとなりました。
今回は、「学校での自分の立ち位置、出方・スタンス」について各自の捉えを出し合って考えを深めました。
本研究会には、若手からミドルリーダー、ベテランまで多様な立場の仲間が所属しています。
まずは、「自分が考える自分のポジションや教職員集団内での出方」で感じていることについて出し合いました。
・今の学校に一番長く勤める存在になっている。後輩も少しずつ出来てきて、学校のことを若手に教える存在になっている。職員室全体が明るくなればいいと思って色々とやっている。
・生徒指導担当である。学級の子供以外にも、廊下等で子供に強く言って指導することもある。
・6学年主任として学校を動かさなければいけない立場だが、学校に動かされている感じがしている。
・6学年主任で、市の仕事や役割も請け負っており、学校だけでなく市全体を見るように言われ、意識している。「こういう職員室を目指してほしい」ということを、普段の後輩への声掛けや関わりの中で伝えるようにしている。
次に、困っていることや悩んでいることについて出し合って考えを深めました。
まずは、若手・ミドル層の先生方からの悩みです。
・現学年の担任が初めての学年主任と組んでいる。主任の仕事が見えにくく、「仕事をください」と言いたいのだが、どのようにアプローチしたらよいか分からない。
・職員室を明るくするために、若手を引っ張って盛り上げ担当をしている。しかし、声を掛けている若手は内心はどのように思っているのか心配な面もある。若手の先生は会話が続かないこともあり、もしかしたら嫌なのかなと思ってしまう。
・初めての学年主任なのだが、学年全体を見るという感覚が分からない。おそらく見通しを持てていないからなのか。日々に追われている感じがしており、一方で他の先生からは「主任からどんどんプランを提示しないと…」と言われ、そうしないといけないのか、何か違うのではないかなとも思っている。
・若手は「どんどんやりたいことをやって!」と言われるが、逆に学年主任から提案されて、一緒に練り上げていく方が取り組みやすい。
これらに対して、ベテランの先生方からは、
・「目の前の子供に対して、どういう力をつけていきたいか」を中心に据えて、立場は関係なく提案すればよい。そのために、それぞれの教師自身が自ら資料を集めたり調べたり考えたりすることが重要である。そこに立場は重要ではなく、互いに切磋琢磨していけばよい。
・学校組織は鍋蓋型といわれており、学年主任は法律上では上司ではなく同僚であり先輩である。主任の助言を全てうのみにして真似をしてもうまくいかないことの方が多い。結局のところ、自分のよさを思い切り出して自己流を突き詰めていくしかない。
・学年主任の立場になったら、「主任はこうあるべき」にとらわれずに、自分の理想とする学年経営をしたらよい。ヒントとしては、自分が今まで組んできて嫌だったことの逆をしたらよいのかもしれない。
・職員室を明るくするといった「雰囲気をリードしていく」という意識はとても重要である。学校組織そのものに意識を向け、職員室をよい雰囲気につくることができたら、子供は必ず良くなる。職員室の担任は教頭先生であり、ミドル層の先生方は学級委員長のような存在になれたらよい。職員室を眺め、元気がない先生がいたら気にかけたり声をかけたりしていると、管理職もその姿を見てくれている。自分も、つらい時もあるが学級と同じで職員室の先生方にたくさん話しかけるように心がけている。またそのような関わりの中で、逆に自分が助けてもらえる時も多くある。
学年主任の学年運営例として、以下の助言をいただきました。
①教科で役割分担を決める。
②主任は、困った場合の電話対応の担当をする。
③子供の安全面に関わること以外は、若手にどんどん挑戦してもらう。
④挑戦したことは、15分間だけ時間を決めて反省会をする。
⑤1学期は、主任の指導の姿を若手に見せるようにする。
⑥2学期からは、若手のサポートに回るようにし、だんだんと学年の指導を手放していくようにする。
このように、1年間の段階を意識していくとよい。
ベテランからの悩みとしては、
・自分がやってみたい思いを若手に投げかけると、逆に若手を苦しめることになっていないか心配である。自分が若手だったときは、やりたいことを主任にさせていただいた。つらい場合は、無理せずに言ってもらえたらと思う。
・学年主任は、主任としての制約が増える。子供のためにワクワクするようなことが思い浮かんだ時に、進めた方がよいか取り下げた方がよいか迷う時も多い。
・学年運営を進める際に、主任は様々な仕事を自分でやった方が早い。しかし、若手を育てる意味でも、こらえたり待ったりすることも重要であり、その加減が勉強かな。若手が失敗したとしても、そこから学ぶことができたら失敗は失敗ではない。若手をどう育てるかといった人材育成が一番重要であると思う。
といったことが出されました。
最後に辻井先生からご助言をいただきました。
・「平教員なら学年を見る目を、学年主任なら学校を見る目を、教頭なら市全体を見る目を持つ」ということを意識してきた。こうすることで、自分の視野を広げる視点を持つことができた。
・「人が育つ」ということは、どの年代であっても大切なことである。管理職の立場になると、自分より年配であっても育てなければならない。そのためには、「ありがとう」と感謝を伝えることと、時々指摘することが重要である。
・各種主任になると、仕事は自分でやった方が早い場合がある。自分で仕事をやる際も、必ず誰かを連れていくようにして、そばで姿を見せたり一緒にやったりすることで後輩へとつながっていく。
・自分の経験として、全く新しい仕事をすることになった時は、勤務後に過去の1年分全ての資料に目を通し、その仕事の全体像や具体を把握するようにした。このようにすることで、見通しを持つことができた。
・悩みは次につながる。大いに悩んで結構である。悩んで、苦しい思いをした経験こそが、実力へとつながっていく。思い切ったことをやればよい。叱られてもめげずにやったらよい。
最後に宮腰先生から、この会から刺激を受けて明日から変えていこうと思えることが「実」なのではないかとの話がありました。
今回の研究会では、様々な「立場」の中で思いや悩みが出されました。人はそれぞれの「立場」を背負って生きています。そしてその立場ごとに、悩みはあるものです。年齢を経てどのような立場になったとしても、悩みは尽きることはありません。その悩みから目をそらすのではなく、正対して自分で考えてやってみることで経験が血肉となり、教師自身が成長していけるのだと思いました。時にはつらいこともあるかもしれませんが、そういう時こそ自分が成長できる場面であると思い定め、逆に「その状況を楽しむ」といったような心持ちで取り組むことも大切かもしれません(なかなかできることではありませんが)。一方で、他者にうまくいかない原因を求めたり、責任を転嫁したりしているようでは、自己成長は難しいようにも思います。
また今回の研究会は、自分たちの現状や捉えを出し合い、そこでの悩みや困り感を聴き合う中で、互いの考えや捉え方を見直すという流れで進めました。我々教師は、明日の授業に役立つ具体的な「手立て」に意識が向きがちです。今回のように抽象的ではありますが、「スタンス」「捉え」についての悩みを切り口として考えることで、「教師として人としての在り方」に関わるものに目を向けることができたのではないかと思います。
次回は1月14日に、「若手5年目までにやったらよいこと、自分がやってきたこと」について考えを深めていきたいと思います。今後も、様々な立場から自由に意見を伝え合い、聴き合うことを通して考えを深めていくことを大切にしていきたいと思います。
それでは、よいお年を!
村田 夏樹
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