2022年 あけましておめでとうございます! 会長 村田夏樹

 皆様、新年あけましておめでとうございます。今年は壬虎(みずのえとら)の年、「新しく立ち上がること」や「生まれたものが成長すること」といった意味を含むそうです。新型コロナウイルスが収まり、新たな価値のもとで新しい社会が創られていく始まりの年になるとよいですね。

 さて、本研究会もスタートしてから5年を経ることになりました。これまで、キャリア教育をベースとしながらも、「実のある教育とは何か」ということについて追究してきました。月1、2度集まって対話を重ね、コロナ渦ではオンラインでの研究会も模索して行い、50回を超える研究会を重ねることができました。そのような中で、先進地の取組を視察させていただいたり、紀要論文を発行したりしましたが、何よりも我ら会員の「人としての学び」を深めることができたように思います。

    正直、普段の日々の業務に加えて研究会に参加することは簡単なことではありません。このような多忙な中でも、自分たちの意志で集い、対話を重ねることにより、「教師としての自分」ひいては「人としての自分」を顧みて、また明日へ挑戦していく勇気を抱くことができたように思います。


 ここで少し「自己実現」という言葉について考えてみたいと思います。小学校学習指導要領の特別活動には、育成を目指す資質・能力として「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の3つが示されています。「じゃあ自己実現って何?」って思うことってありませんか。そもそも自己って実現するの?いつ実現するの?年をとったら?成功したら?人生の成功って何?なんて思ったことありませんか。私は、この「自己実現」という言葉にどうも違和感を感じていました。何か遠くにある理想を追い求めているようで、実現したら終わり?みたいな雰囲気がどうも好きではなく。「自己実現」ではなく、むしろ「自己成長」の方がしっくりとくる感じがしていました。

 気になったので少し調べてみました。アメリカ の 心理学者 アブラハム・マズロー は、「人間は 自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の 欲求を5段階の階層で理論化しました。5段階の欲求とは、最下部から「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認の欲求」があり、最上位が「自己実現の欲求」です。下部の4つの欲求を欠乏欲求 (Deficiency-needs) 、自己実現の欲求を存在欲求 (Being-needs) としてまとめることもあるそうです。ではマズローが言う「自己実現(Self-actualization)」とは何か?自己実現を分かりやすく説明すると、「ありのままの状態であること」だそうです。自分が実現させたい未来について指すのではなく、「自分らしい生き方」を指しているそうです。マズローによると、人間はすべての欲求を満たすことで「人間本来のありのままの姿」になるとしました。この人間本来の姿になっていることを「自己実現」と言います。

  「自己実現」を果たした者は以下の15の特徴があるそうです。


①現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ。

②自己、他者、自然に対する受容。

③自発性、素朴さ、自然さ。
④課題中心的。
⑤プライバシーの欲求からの超越。
⑥文化と環境からの独立、能動的人間、自律性。
⑦認識が絶えず新鮮である。
⑧至高なものに触れる神秘的体験がある。
⑨共同社会感情。
⑩対人関係において心が広くて深い。
⑪民主主義的な性格構造。
⑫手段と目的、善悪の判断の区別。
⑬哲学的で悪意のないユーモアセンス。
⑭創造性。
⑮文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越。

 つまり、マズローが言う人間本来の姿とは「自分のしたいこと=社会貢献」になっている状態だと解釈できます。このように、「自分に偽りなく好きなことをしていて、かつ、それが社会貢献になっているような状態」が「自己実現」と言えそうです。


 「在る(being)」ということ、自分の「したいこと」、「働く(≒はたを楽にする)」ということのつながりについて、もう一度整理したいと思います。最近、SDGs、Well-Being、多様性という言葉が流行っています。この流れは、人類が経済資本主義が中心の価値から、もう一歩先の価値観(もしかしたらそれは幸福資本主義かもしれません)へ進めるための切り口になるのかな…とも思います。「自己実現」って、簡単なことではないかもしれません。しかし、多くの人が「自己実現」できる社会がやってくるように、自分たちには何ができるのかを考えて動いていきたいと思います。

 2022年、皆さんにとってよい一年になりますように!

                          実ある教育を語る会 会長 村田 夏樹

                                     下記は引用参考資料

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm