雑感 氷見卓也(2021.02.27)

   前提認識という言葉がありますよね。「赤信号は止まれ」「青信号は進め」などは、私達日本人には当たり前の前提認識です。しかし、信号機がない国にとっては、それらは共有されません。また、これは日本では法的な制約を受ける類のものですから、我々日本人には強固に刷り込まれ、認識されています。法的な制約があるものは、守らねばならない、変わらないことが共有されていなければならず、破れば社会生活が破綻していきます。
   では、一定の集団組織に目を向けてみるとします。そこには、前述のような法的根拠があって共有するものではなく、「普通はこうするでしょう」という暗黙の領域も存在します。例えば、男性の名札枠を青、女性の名札枠を赤で示す会社がいまだにあります。これはジェンダレスな社会が加速する現代においては、ナンセンス極まりない事例です。そこには、過去から受け継がれてきたあまり根拠がない前提認識が横たわっており、誰も疑問視できなくなっているわけです。
   我々学校組織においても、同様の現象は多々起きます。
   ある学校の事例です。清掃中は帽子をかぶるというルールがあったそうです。理由は「埃をかぶる可能性がある、つまり衛生面に配慮するため」だったそうです。しかし、休憩時間からすぐに清掃場所に向かいたい児童たちは、その帽子と雑巾をくるくるとまとめて持ち、グラウンドに飛び出していく毎日だったそうです。果たして、その帽子は衛生的でしょうか・・。このことに気が付いた新任の若い教諭が職員会議で「清掃中の帽子をやめてはどうか。本当に衛生的だろうか」と声を上げました。周りの教諭たちは、「何を言い出すのだ!今までずっとこれでやってきたんだ」と鬼の形相でそれを突っぱねたそうです。しかし、改善策として、雑巾は清掃場所に備えることにはなったそうです。これは、その若い教諭のお手柄ですね。現在、その学校には清掃中の帽子は存在しません。
   もうひとつご紹介します。これも清掃に関するものです。ある学校で、黙働(黙って働く)をモットーとし、清掃中に赤いバツ印が付いたマスクを着用していたそうです。それが当たり前として受け継がれいき、誰も疑問視しない状況まで進んでいきました。みなさんは、どう感じますか?私は、クイズ番組じゃあるまいし、そもそも『黙れ』という強制力が強すぎ、人権侵害にも感じます。しかし、これは所属する教員たちには前提認識となってしまい、当たり前となっていったのです。今は、保護者からの訴えにより、やってないそうです。(まともな方がいて、よかった)
   働いていると、「去年まではこうしていた」「変えるなんて意味が分からない」といった言葉は学校あるあるです。変化を伴うことは、やったことがないことなので、みんな不安になります。集団心理はとても恐ろしいもので、改善されるべきことも、「今までと同じでいい。だって知ってるから楽だもの」とそのままになることはよくあります。
   新型コロナウィルス感染拡大防止を一義に掲げて教育していくことを求められる現在においては、昨年までと異なるんだ、変化しなくては、という感覚は必要不可欠となりました。この状況下において、最大限の教育効果を発揮するためには、まずは新型コロナウィルス感染拡大防止に関する意識の温度差を整えていく必要があります。その役目は、管理職にあると思います。そして、それを根底に置きつつ、思い切って前提認識を見直していくことが求められると思うのです。みなさんは、どう思いますか?

   雑感ですので、戯れ言とお許しください🙇
   

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm