第14回研究会 ① (2018.11.28)

  富山国際大学 辻󠄀井研究室にて、久しぶりの研究会を行いました。今回は、メンバー4人がそれぞれの授業実践により見えたもの、計画中の授業等について発表し、それについて意見交換を行い、辻󠄀井教授からご指導をいただきました。
  以下は、各自の発表と協議、辻󠄀井教授からの指導助言です。
1.提案  宮腰
〈これまでの授業の流れ〉
    ①自分のことを自分で分析する
    ②保護者にインタビュー
  (性格、好きなこと、熱中できること、
こんな大人になってほしい)
             ↓
       親から認められた喜び
    ③友達・担任の見方
  (班で、友達のよさを付箋に書いて交換、分析した。また、担任も児童各自がよさを発揮できそうな職業を紹介した)
    ④第1回マンダラート
    ⑤職業調べ
    ⑥なんのために働くのかを調査
   (保護者にインタビューし、お金のため、社会の役に立つためという考えを教えてもらった)
    ⑦中学生との連携授業
    ⑧第2回マンダラート(変容を見た)
    ⑨これから何を大切にしていくか(予定)
〈解明されたこと・改善点〉
  学習以前のアンケート調査では、将来の夢をもつ児童が全体の20%に満たなかった。最も多い夢が獣医であった。しかし、学習が進むにつれ、可能性の幅が広がって楽しそうに追究する児童が増えた。その要因として、自己有用感の高まり、様々な職業を知り選択幅が広がったことが考えられる。保護者、仲間、教師から認められ、笑顔も増えた。また、保護者を巻き込んだことにより、働く大変さ、誰のために働くのか、といったことを考えることができた。児童の感想の中に、
「誰かを笑顔にすることが仕事」
「責任ある行動が必要」
「親が夜遅くまで働いていることに、改めて感謝する気持ちがわいた」
といったものがあり、大きな学びがあったことを感じた。
  課題としては、紹介した職業に限りがあったこと、小学生が職業体験するには難しさがあること、保護者との連携が難しいことが挙げられる。
〈協議〉
  調査を進めるうちに、小学生が質問したい内容が変化していき、中学生の伝えたいこととズレがあったかもしれない。しかし、それだけ小学生が高次元に変容を遂げたとも考えられる。
  教師の芽線が、児童の自己有用感を確実に高めた。それだけ教師の言葉には、影響力があると考えられる。あくまで教師の主観ではあるが、児童たちは客観的事実としてそれを捉えていたと考える。また、児童が描く夢と180度異なる芽線をあえて提供したことにより、視野を広げることに成功したのではないか。必ずしも、提供された芽線を児童が追わなければいけないわけでなく、あくまできっかけを与えることが重要。
  「なぜ働くのか、といった本質」に迫る展開を今後考えていく必要性がある。
〈辻󠄀井教授からの指導助言〉
  将来を考えることが第一の目的であり、明確なゴールをあまり意識し過ぎなくてもよいのではないか。児童たちの考えがふくらんだ、視野が広がったことを図示してやるとよい。小学校段階では、それで充分。
  なんのために働くのかを考える時間を差し込むことは重要。小学生が自ら求め調査するのは難しいため、教師から与えてやってもよいのではないか。
  

2.提案 氷見
  授業内容については、先日明記したため、割愛する。
〈実践を通して見えてきたこと〉
  小学生版マンダラートを自己流で作成したが、6年生段階で個人で仕上げることがいかに難しいかがわかった。マンダラートに取り掛かる前に、まず自己分析シートを、仲間からアドバイスをもらいながらじっくり時間をかけて作成する必要性があると考える。また、自分にゆかりある先輩からのメッセージも、未来を「自分ごと」として捉えるために効果的であったと言える。結果、全員が「なりたい自分」を設定することができた。
  その自己分析シートを四方に四マスのみのマンダラートに簡略化してまとめ、具体的実践を数値化したことも、振り返りの簡略化につながったと考える。時間をかけ、仲間の力も借りて自己分析を行なってきたことにより、全員がスムーズに四マスのマンダラートを仕上げることができたのだろう。
  また、総合と図工を連動させ、キットを使い「なりたい自分」を立体化する活動も具体的イメージを広げることにつながったと考える。さらに、社会科で日本人の国民総生産、平均年収など、金銭について学ぶ機会があったことにより、自分が選んだ「なりたい自分」になれたとして、金銭的にはどの程度給与を得て、どんな暮らしぶりになるのかを意識し始める児童も出始めた。
〈協議〉
  仲間から、自分がいかなる力をもつか教えてもらうのは、とても重要。先輩からにせよ、仲間にからにせよ、教師からにせよ、「背中を押してくれる誰かの手」が必要であり、それが自分の可能性を認識することにつながる。
  小学校段階からキャリア教育を行うことで、子供としてのみ位置づけられてきた児童たちが、社会に自分を位置づけ始めることになる。自分には可能性がたくさんある、その広がりを感じることの楽しさを味わい始める。選ぶ楽しさも感じるようになる。
〈辻󠄀井教授からの指導助言〉
  給与のことを考え出したということは、おぼろげに「なりたい自分」を思い描いていた段階から数段リアリティある意識をもつようになったということである。キャリア教育は、最終的に、未来に向けた知識を得たり、どのような心で働くべきかを考えたり、どのような身体の使い方をすべきか考えたりするようになる。つまり「知・徳・体」ありとあらゆる学びにつながっていくということである。


第14回②に続く!
  

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm