第85回研究会(2023,12,15)

今年最後の研究会となります。

今回は、「芽線」を意識して第一期(5~7月)、第二期(9月~11月)と実践してきて、各自がまとめた文章をつなぎ合わせて、そこから見えてくる研究成果について分析を行いました。


まずは、子供の変容についてです。それぞれの記録した文章を読み解く中で、子供に起きた変容が明らかとなってきました。アンケートの結果を4月のものと比較すると、少し自分を肯定的に捉えるようになったものが多くありました。また、アンケートの数値としては明確に表れていなくても、子供の様子や語りから自分や仲間を肯定的に捉えることができるようになった事例もありました。中には、以前は友達とうまく関われずに自己否定的だった子供が、今は友達との関係の中で自分の居場所を見付け、安心して過ごせるようになっているという事例もありました。このような変化は、本人の努力はもちろんあるのですが、教師の関わりの側面も大きいと考えます。では、このような変化をもたらした教師の関わりはどのようなものだったのでしょうか。今回の研究では、その細かな関わりを抽出するというよりは、「芽線」を意識したことで教師の考えや行動がどのように変容してきたかについて教師の省察をもとに分析を行います。

「芽線」を意識して取り組んできた教師自身の省察した文章もとに、教師の変容にはどのようであったかについて分析をしました。ここでは、それぞれの教師が省察した文章から伝えたい「意味」を抽出し、KJ法によって整理しました。その結果、「芽線」を意識して取り組む中で、「強みを生かす場を作る」や「子供の内面を理解しようとする」等といった教師の意識が生まれてきたことが見えてきました。このようにKJ法で抽出した要素を整理する中で、見えてきた教師の考えや行動の変容は、以下の通りです。


まずは、子供が「認められていることを感じられる場を増やし」たり、教師が積極的に「称賛や役割を与えて認め続ける」といった、「強みを生かす場」を作ろうとする。その過程において教師が一方的に強みを生かす場を作るだけでは子供が変容しないことに気付き、「子供の内面まで理解しよう」という意識が働く。このようにする中で、子供は「自分のことを分かってもらえる」といった「安心感」を感じることができ、教師は、その「子供の捉え方を変える(捉え直し)」が起きたことで、新たな子供の側面に「気付き」、その側面を「価値付け」たり、子供の内面に即した「適切な声掛け」を行ったり、さらにその子供の「強みを生かす場」を設定したりしようとする。このように子供に関わる中で、子供は「自信を付け」たり、自分のよさについて「再認識」したりする。このような過程を、螺旋的発展のように繰り返す中で、教師の子供の見方が深まると同時に、新たな関わり方法や手立てが見え、子供への関りが変わっていく。また教師は、抽出した特定の子供にこのように意識を向ける中で、その子供を通して周りの子供や集団の傾向が見えてくることに気付く。


今回の研究会では、教師が「芽線」を意識して子供と関わる中で、教師の意識や手立て、そして子供の変容へと上記のような効果があったのではないかということが明らかとなりました。

今後はこれらの内容について、しっかりと文章化をしてまとめていきたいと思っています。


2023年もあとわずかです。

来年も、子供たちの「実」、教師の「実」、そしてみんなのWellbeingを目指して、取り組んでいきたいと思います。

                                    村田 夏樹

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm