第35回研究会(2020.09.21)

 今回は、キャリア教育を進めていく中での実践上の悩みや、疑問、違和感など、各自が普段授業をしているなかで感じている「何かうまくいかないなぁ」という部分を中心に話し合いました。

 そこで出された意見は以下のようになります。


① 学校行事を通して、子どもたちに活動のめあてや振り返りを書かせているが、子どもが書いたものに対して、教師としてどのようなコメントを返せばよいのか、また、子どもが自分のよさや次の活動への意欲をもてるようにするためには、どのような視点が必要なのか。


② 算数科(教科)の中でのキャリア教育はどのように実践すればよいのか、まだ具体的な方法が見えていない。算数日記は書かせているが、もっと子どもの日常に迫って意味のある展開にするためには、どのように進めていけばよいのかわからない。


③ 6年生を担任していて、これまでは1人1人がリーダーを経験するプロジェクトを考えていたが、今年度はコロナ禍という状況の中で制限が多かったため、7月にプロジェクトの見直しを図った。1年生との活動や運動会など、「できるようになったこと」に目を向け、プロジェクトを進めている。


④ 社会科(歴史)の授業を通してキャリア教育をつなげていこうと考えているが、3武将の功績や生き様に迫ったものにしたいと思う一方で、どのように進めていけばよいのか悩んでいる。


⑤ 学級づくりの1つとして、係活動を会社活動にしてみた。キャリア教育の実践をしている実感はあるが、キャリア教育のゴールがわからない。子どもの成長を感じる場面があったり、子どもが立ち止まっている場面があるが、やりっぱなしになってしまわないか不安。


⑥ 総合でキャリア教育をしている。4年生でしごと調べをしているが、どこまで仕事調べをさせればよいのか、範囲がわからない。授業者のイメージした仕事調べとは違っている。自分の個性・特性を知った上で仕事を調べた方がよかったのかもしれない。4年生でのゴールはどこにあるのかわからない。また、5年生、6年生への接続も見えてない。


 その後、話し合われたことは、以下のようになります。

・キャリア教育のゴールを考える前に、「キャリア」は、「轍」である。一言でいうと「生き方」、「人生」であると考えると、ゴールはないというのが結論になるのではないか。キャリア教育を行うことは、その子の人生を支えることになるだけで、特別に何かをしなければならないということではないのかもしれない。


・キャリア教育をすすめることは、職業観を育てることではない。己を学ぶことであると思う。4年生で職業調べでゴールはない。大人でもキャリアのゴールはない。自分と社会を結びつけることを体感させたり、自分と社会がつながっていることの実感でよいのではないか。子どもにとって社会は、学級であり、学校。みんなの中の自分を思い描くことができるようにさせてあげることが大切なのではないか。


・どんな自分に気づくかが大切。教科の中では、その教科が自分とどう結びつくかが大切になってくるのでないか。例えば算数科「がい数」で、それを学んだことによって、得したことは何?と子どもに聞いてしまってもよいのではないか。何が身についたのか、子ども自身が一番わかっているのかもしれない。


・学びによって、子どもは「何を得するのか」、さらに言えば「どのような可能性・未来が開けてくるのか」を問うていくことも、1つの方法としてあり得る。


・これからは、「やったこと」に対して、「何を得たのか」を考える時間をとって、「これから先、こんなことに使える」ことを話し合う時間があった方がよいのではないか。ワークシートに書くことだけが振り返りではない。


・自分がこれまでに行ってきた活動を振り合えると、「やってきたこと」は振り返ってきたが、「これから先」という視点を子どもにもたせていなかった。


・教科の中で振り返りをするとき、理解していない(理解があやふやな)まま、「〇〇さんが言っていたから」「何となく」振り返りを書いてしまってよいのか。子どもたちそれぞれで、何を振り返りたいのか違うので、それぞれで書いてほしいという思いもある。


・一部の子どもの意見が波及することのメリットとデメリットがあるのではないか。ほとんどの子どもたちが「わかっていない」状況の場合、一部の子どもの「わかった」を全体の学び、全体の「わかった」にしてしまってよいのか。一部の子どもたちの意見が全体に波及してしまうのは、どうしたらよいか悩む。


・振り返りは、その子が捉えたことでよいのではないか。自分の振り返りに自信がないのかもしれないが、振り返りに正解はないので、それが「よい」という観点はないのでは。振り返り後、すぐ対話を入れてみるのも1つの方法なのかもしれない。


・教師のねらいがあって授業をしているので、その中で振り返りをしていくことが大切。誰か1人の振り返りや意見が通ってしまう状況はこれから打破していく授業づくりをしていく必要があるのではないか。ただし、教師の意図をくみ取った振り返りをしてしまう子どもの振り返りに強化していくのはまずいかもしれない。


・学びのまとめと「~観(例えば歴史観や生活観)」とは違う。学びのまとめとして学習指導要領の内容をまとめている振り返りであるならば、一部の子の学びでも広げて他の子の学びを保証してあげなくてはならない。一方「~観」を自分でアウトプットしていくことができれば、学びと「~観」がつながっていく。各教科の学びを通して「~観」を育てていくことが大切。


 キャリア教育にゴールはないという話から、様々な意見や疑問、課題が表出された。今後も研鑽を重ね、ゴールのない課題に向き合っていきたいと思った。

 最後に、「そもそも、アクティブラーニングに型があること自体、私はおかしいと思う」と言われた教育評論家の尾木直樹氏の言葉が頭を過ぎる会であった。もしかしたら、キャリア教育にも”型”は存在しないのかもしれない。

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm