雑感 氷見卓也(2020.06.13)

   休業中、原泰久氏の大人気漫画 「キングダム」の合従戦場面を読み返しました。今さら、私などが言うまでもなく、何度読んでも楽しめる、そんなすごい漫画です。
   舞台は紀元前、中華の戦国七雄が睨み合う時代。趙の宰相李牧(りぼく)の呼びかけによって魏、韓、燕、斉、楚の六国が手を組み、秦国に襲いかかります。六国の合従軍に対し、軍事の全てを投入して立ち向かう秦国。その熱き戦いに胸が高鳴ります。
   秦国の将軍蒙武(もうぶ)は、楚の大将軍汗明(かんめい)と対峙します。蒙武は、実力はかなりのものと言われてはいましたが、主立った戦歴がなく、中華で名が轟くほどまでではありませんでした。一方の汗明は、戦歴があり、その武力は、中華で恐れられていました。そんな2人が激突するとき、蒙武は汗明に対し、言います。

  「昨日まで相手に恵まれていただけだ」

  私は、この言葉にいつもドキッとします。

  新しい学級を担任する春、私は、この蒙武の言葉を心でつぶやくようにしています。自分自身に対して。年度末、子どもたちとのつながりが強固になり、「ずっとこの学級を担任していられたら、幸せだな。楽しいだろうな」と感じます。しかし、はじまりがあれば、終わりがあり、別れと次なる出会いが待っています。つながりを深めた子どもたちに感謝し、自分を奮い立たせ、次に向かう、そんな感じで私は教師を続けてきました。
  教師となり15年が過ぎました。周囲からは、「若い後輩に教えてあげて」「もうベテランだよ」など肩が重くなりそうな言葉をかけられることが多くなりました。
   しかし、私はいつになっても専門職としての、職業人としての自分に自信がありません。いつも、怖いです。新しい学級との出会いに、いつも思うことは一つです。
 
  「1年間、うまくやれるだろうか・・・」

   5、6年ほどキャリアを積み、卒業担任を1、2度経験したあたりの教師が、学校教育の全てをわかったように勘違いし、努力を惜しみ、その後伸びないことはよくあるように思います。私自身もかつてそんな感覚に陥った経験があります。また、10年未満のキャリアで自信に満ち溢れ、壁にぶちあたり折れてしまう、そんな同僚も見てきました。初心の情熱がねじ曲がって、子どもファーストでなくなるというか・・、そんな感じでしょうか。
   だからこそ私は、常に初心の頃の自分に巻き戻し、驕らず、「昨年度は、恵まれていただけだ・・」と思うようにしています。そうすることで、謙虚な気持ちとなり、心をギュッと引き締めて、子どもたちに向かえるような気がするのです。
   子どもたちはあまりに多様です。その子その子に対して真新しい目で才能の芽を見つけてあげたいと思うのです。

   これからも、謙虚に、驕らず、自分なりののびしろがあると信じ、子どもたちと過ごしていきます。

   ありがとう!蒙武将軍! 





引用参考文献https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%99%E6%AD%A6  最終閲覧2020年6月13日

実ある教育を語る会

富山県小学校教諭の有志による実践研究会です。日々の実践を基に研究を深めます。 〜真贋を見極める目を!真実を追い求める目を!未来を作る芽を見つける目を!〜 第3章スタート! 引用参考 http://www.imamiya.jp/haruhanakyoko/colored/info/kyoto.htm